こんにちは、クリエイターのオトです。
最近、AI作曲ツールの進化がとんでもないことになっています。
曲を一から生成するだけでなく、既存の楽曲を読み込ませて、
「ジャズにして」
「メタルにして」
といった形で、別ジャンルへアレンジすることまで可能になってきました。
僕自身もDTMで作曲活動をしているので、この技術には以前から興味がありました。
一方で、YouTubeなどを見ていると既存作品を題材にしたAIアレンジを見かけることもあります。
そこで一つ疑問に思ったのが、
「AIによる版権曲アレンジが簡単に量産できるようになったら、これまでの二次創作文化はどうなるんだろう?」
ということです。
……と、ここまで考えて気づきました。
実際に使わずに語っても仕方ない。
そこで今回は、自分が権利を持っているオリジナルBGMを実際にSunoへ読み込ませ、5曲をさまざまなジャンルへアレンジしてみました。
その結果、AIアレンジに対する考え方も少し変わりました。
今回は法律の専門的な解説ではなく、実際に作曲している人間がAIアレンジを使ってみて何を感じたのかを中心に考えていきます。
そもそも「カバー」と「アレンジ」は同じではない
本題に入る前に、権利について最低限確認しておきます。
YouTubeなどJASRACと利用許諾契約を締結しているサービスでは、一定の範囲でJASRAC管理楽曲を利用できます。
しかし、
「YouTubeなら版権曲を自由にアレンジして投稿していい」
という意味ではありません。
JASRACによると、楽曲を編曲したり歌詞を変更したりする場合には、編曲権の許諾や著作者人格権について別途確認が必要です。
さらに、市販音源など第三者が制作した音源そのものを利用する場合には、著作隣接権など別の権利も関係します。
つまり、
- 自分で演奏する
- 曲をアレンジする
- 原曲の音源を使う
では、権利関係がそれぞれ異なります。
なお、この記事では個別の楽曲について「これは合法・違法」と判断することはしません。
あくまでAIアレンジという新しい創作方法と二次創作文化について考える記事として読んでいただければと思います。
※フリー素材を利用するときの権利については、こちらの記事でも解説しています。

AIアレンジの何が気になっていたのか
僕が気になっていたのは、AIを使うことそのものではありません。
AIによって、
「他人が作った人気コンテンツを題材に、非常に低い制作コストで大量のアレンジを作れるようになること」
です。
人間が1曲アレンジしようと思えば、
- 耳コピ
- アレンジ
- 打ち込み・演奏
- 音源選び
- MIX
- マスタリング
など、かなりの時間が必要です。
僕自身も1曲のBGMを完成させるために何時間もDTMをしています。
これがAIなら一瞬でできる。
もしそうなのであれば、従来の二次創作とは少し性質が変わってくるのではないか。
そう考えていました。
ただし、ここで問題があります。
僕自身がAIアレンジをまともに使ったことがありませんでした。
そこで、実際に試してみます。
自作曲5曲をSunoでアレンジしてみた
今回使用したのは、すべて僕自身が制作したオリジナルBGMです。
自分が権利を持つ楽曲だけを使用して検証しました。
使用したのはこちら。





ロック、ゴシック、劇伴、ケルトなど、特徴の違う曲を選んでいます。
そして、それぞれジャズ、メタル、ケルト、ユーロビートなど別ジャンルへのアレンジを試しました。
結果がこちらです。
| 原曲 | AIアレンジ | 個人的評価 | 感想 |
|---|---|---|---|
| Struggle_R | メタル | 3.5/5 | 原曲との相性が良く自然に強化された |
| Struggle_R | ジャズ | 4.5/5 | おしゃれなジャズへかなり良い形で変化 |
| Struggle_R | ケルト | 2.5/5 | 装飾音などの要素はあるがケルト感は弱め |
| Nocturnal Crash | ジャズ | 4/5 | 原曲を活かしながら良いジャズになった |
| Nocturnal Crash | ロック | 4/5 | 元の方向性を保ったままクオリティアップ |
| Nocturnal Crash | ボーカル | 1/5 | 原曲フレーズがほとんど残らず別曲に近い |
| Night Forest_R | ジャズ | 3/5 | 元々のケルト感も残った面白いアレンジ |
| Night Forest_R | ユーロビート | 0/5 | 3/4拍子が維持され「電子音のワルツ」のようになった(プロンプトを変えたら4/4になった) |
| Purse of War | ジャズ | 4/5 | 劇伴からの変換でもかなり自然 |
| Purse of War | ロック | 4/5 | 元々激しい曲なので相性が良かった |
| Feast of Darkness | ジャズ | 3.5/5 | 最初は激しすぎたがプロンプト調整で改善 |
※あくまで僕自身の主観による評価です。
一番驚いたのは「30秒」
今回使った原曲は1分程度の短いBGMが中心ですが、
生成にはおおむね30秒程度しかかかりませんでした。
これには驚きました。
自分で同程度のアレンジを作ろうと思ったら、当然30秒では完成しません。
しかも、
「Jazz」
くらいの簡単なプロンプトでも、それなりのクオリティで出てきます。
実際に触ってみて、
「AIならアレンジを大量に作れる」
という点については想像以上でした。
ただし「何でも一発でできる」わけではない
一方で、面白い失敗もありました。
特に分かりやすかったのがNight Forest_Rのユーロビート化です。
原曲は3/4拍子。
一方、僕がイメージしていたユーロビートは4/4拍子です。
そこで「Eurobeat」と指定してみたのですが……
3/4拍子のまま電子音になりました。
結果として、
「これはユーロビートというより電子音のワルツでは?」
という謎の楽曲が完成。
少なくとも今回の条件では、
「ユーロビートにして」と指定しただけで、AIが拍子まで4/4へ変更してくれるわけではありませんでした。
※プロンプトを変更したら4/4にできました
プロンプトによって結果は変わる
Feast of Darknessでも面白い結果がありました。
この曲は元々激しいゴシック・ロックです。
最初は単純に、
Jazz
とだけ指定しました。
すると、確かにジャズにはなったものの、原曲の激しさまでかなり引き継いだジャズになりました。
そこで、
Relax
という方向性を追加。
すると、かなりイメージに近い落ち着いたジャズへ変化しました。
つまり生成自体は非常に簡単ですが、
「自分が頭の中でイメージしているアレンジ」を作ろうとすると、プロンプトや再生成による試行錯誤が必要
ということです。
これは実際に使ってみて初めて分かった部分でした。
Jazzだけ指定
Relaxも追加
楽器の音はどうだった?
全体的なクオリティはかなり高いと感じました。
ただ、DTMをやっている身として楽器単位で聴くと、気になる部分もあります。
例えばケルトアレンジ。
フィドルの音が少し荒く感じました。
もっとも、ケルト系フィドルにはクラシックバイオリンとは違う荒々しい演奏表現もあるので、単純に「音が悪い」と切り捨てるのも違うように思います。
また、ジャズアレンジ自体はかなり気に入ったものの、サックスについては、
生演奏特有の艶っぽさ
までは感じませんでした。
それでも数十秒でこのクオリティが出てくることを考えれば、十分すごいと思います。
悔しいけど、自分より上手いと思うところもあった
ここは作曲している身として複雑ですが……
普通にクオリティが高いです。
特にStruggle_Rのジャズアレンジはかなり気に入りました。
これを流しながらコーヒーを飲みたい。
また僕自身、ギターについてはまだ知識が十分ではありません。
そのため、AIが作ったハードロックやメタルを聴いて、
「こういうアプローチもあるのか」
と、自分にはない引き出しを見ることができました。
古い自作曲を使ったこともありますが、純粋に自分でアレンジするよりクオリティが高いと感じるものもあります。
これは悔しい。
でも、同時に面白い。
AIをアレンジのアイデア帳として使う
という方法には、かなり可能性を感じました。
実際に使ったら「二次創作みたいで楽しかった」
そして今回、一番予想外だったのがこれです。
Sunoでアレンジを作っていて、
「自分の曲を誰かが二次創作してくれたみたい」
という感覚になりました。
これは普通に嬉しかったです。
自分が作ったメロディがジャズになったり、メタルになったりする。
しかも自分では思いつかなかったアレンジが返ってくる。
作曲とは違う楽しさがあります。
一方で、
「自分で音楽を作っている」という楽しさは、僕の場合ほとんどありませんでした。
プロンプトを書いて結果を待つことと、
コードを考え、メロディを作り、楽器を選び、打ち込み、何度も修正すること。
僕にとってこの2つはかなり違う体験です。
ではAIアレンジは二次創作文化を壊すのか?
実際に使ってみた今は、
「AIアレンジそのものが二次創作文化を壊す」とまでは思いません。
色々なジャンルに好きな曲を変化させて楽しむ。
それ自体には、二次創作と似た面白さがあります。
また、従来の二次創作でも作品を販売したり収益を得たりすることはあるため、
「人間の二次創作=作品愛」「AI=金儲け」
と単純に分けるのも違うと思います。
僕が今も気になるのは、
他人の人気作品 × 極端に低い制作コスト × 大量生成 × 収益目的
が組み合わさった場合です。
今回、自分の曲を使ったところ、1回の生成は約30秒。
これなら大量に作れるということを自分自身で実感しました。
だからこそ、AIそのものより、
「誰の作品を、どのような目的で、どのように使うのか」
の方が重要なのかもしれません。
Sunoでも権利のある素材を使う必要がある
なお、Sunoの利用規約でも、アップロードする素材について必要な権利・ライセンス・許諾等を持っていることがユーザーに求められています。
知的財産権を侵害する素材や、使用する権利を持っていない素材のアップロード等も禁止されています。
Suno自身も、既存曲の再現や権利を持たない素材のアップロードを禁止事項として案内しています。
そのため今回の検証では、自分が権利を持つオリジナル楽曲だけを使用しました。
AIなら何でも自由にアレンジしていい、というわけではありません。
Suno利用規約
じゃあAIをどう使う?
ここまで権利や二次創作について色々考えてきましたが、せっかくこんな面白い技術があるなら活用してみたい。
そこで僕は、
「自分の曲をAIでもっと遊んでみる」
方向で使ってみようと思っています。
例えば、
- 自作曲をAIでいろいろなジャンルにアレンジする
- AIアレンジをMIDI化して、DAWで人間が作り直す
- AIが作ったアレンジを参考に、自分で別アレンジを作る
- 苦手なジャンルをAIに作らせて、構成や楽器について勉強する
など。
特に気になっているのが、
「AIが作ったアレンジを、そのまま完成品にするのではなくDTMの素材として使う」
方法です。
今回のSunoでは細かい部分まで自由自在に修正できるわけではありませんでした。
だったらMIDIとしてDAWへ持っていき、自分で修正したらどうなるのか?
これも今後試してみようと思います。
以下後日作成予定です!
→【自作曲をAIでいろんなジャンルにアレンジしてみた】
→【SunoのAIアレンジをMIDI化してDTMで作り直してみた】
→【AIで作った曲をDTMでアレンジするとどうなる?】
まとめ:それでも僕は自分で作る方が面白い
Sunoを実際に触ってみて、AI作曲に対する印象は少し変わりました。
すごいです。本当に。
数十秒で、自分では思いつかなかったアレンジが出てくる。
場合によっては、自分よりクオリティが高いと感じることすらありました。
一方で改めて感じたこともあります。
技術を磨くのは大変だけど、DTMで自分で作る方が何倍も面白い。
コードを考える。
メロディを作る。
楽器を選ぶ。
上手くいかなくて修正する。
少しずつ自分のイメージした曲に近づいていく。
僕にとっては、その過程も含めて作曲なんだと思います。
だからAIに全部作ってもらいたいとは今のところ思いません。
でも、
「自分では思いつかなかったアイデアをもらう」
「自分の曲を違う角度から見てみる」
という使い方はかなり面白い。
AIか人間か。
どちらか一方を選ぶのではなく、
AIを新しい道具として使いながら、最後は自分で作る。
今の僕には、そのくらいの距離感がちょうど良さそうです。