ここ数年、AI技術がものすごい勢いで発展進化しています。
ChatGPTを始め、写真の補正やデータ分析などなど既に生活に根付いているものも多くなってきました。
クリエイティブな要素(イラストや作曲など)はAIの苦手分野だ
などとAI技術が出てきた頃は言われていましたが…
皆様ご存じの通り、クリエイティブな要素にもAIは広く強く影響を及ぼしています。
この記事ではアマチュア作曲家でもある私の目線から
- AI作曲の出現による影響
- 世の中でのAI作曲の活用状況
- AI作曲にできること/できないこと
などをまとめていこうと思います。
AI作曲の出現による影響
AI作曲といってもいくつかパターンがあります。
大きく分けると
- 歌もの曲の生成
- BGM(歌詞のない曲)の生成
の2つに分けられ、個人的にはAI作曲の台頭は後者への影響が大きいと考えられます。
歌もの曲への影響
AIの歌もの作曲では、曲のジャンルやキーワード、長さなどを指定するとそれっぽい歌詞、それっぽいメロディの曲が作られます。
さて、なぜ歌もの曲への影響が少ないと考えられるかというと
作曲者の色が出にくい
これに尽きると思います。
というのも、世の中で俗に言う【売れる曲】というものはざっくり2パターンあると考えています。
それは
- 好まれる色を生み出せるクリエイターが生み出した曲
- 多くの人に「人として」好まれている人が歌う曲
です。
前者は常に作詞か作曲のどちらか、または両方に携わっているクリエイターが生み出した曲、または歌い方に特徴がある歌手が歌う曲の事です。
同じクリエイターが携わるということは、その人の癖や特徴が必ずにじみ出てきます。
そういった癖や特徴が強く人気があるクリエイターが生み出す曲は、長く愛されていると思います。
【例】
- ポルノグラフィティ:ラテン系の楽曲が人気
- SEKAI NO OWARI:独特な世界観、歌詞の独特さが人気
- Ado:力強い切れのある歌い方、幅広い表現力が人気
- 米津玄師:歌唱力はもちろん、作曲作詞、イラストなどマルチに活躍
後者は俗にいうアイドルが歌う曲です。
これは【歌う人】自身に人気があるため、聴かれることが多い→売れるケースです。
もちろん、人気アイドルが歌う曲というのは非常に厳しい審査(コンペ)を潜り抜けてきた曲であることは間違いないありません。
さて少し脱線しましたが、AI作曲はこの色を生み出すのが苦手です。
というのも、膨大な数の曲を分析参考にして曲を生成する都合上、常に同じような癖や特徴を出すことが困難になります。
逆にこの欠点をAIが改善してきた場合、いよいよ作曲業界は大変なことになるかと思います。
BGMへの影響
AIによる影響が著しく大きいと考えられるのはBGMです。
というのもBGMには基本先述した色は求められないからです。
BGMの需要をいくつか考えてみましょう。
- Youtubeなどの動画や実況で使用
- イベントやお店の中で使用
- ゲームで使用
などが考えられるのではないでしょうか。
さて、問題です。
普段インフルエンサーの動画で流れている歌詞のないBGM、何曲鼻歌で歌えますか?
多分この質問で歌える曲というのは数曲だけだと思います。
なぜなら特徴がない(少ない)からです。
もちろん、モンハンやポケモンなど非常にメジャーなゲームなどのBGMは強い色を持っています。
ですが大体のBGMは特徴がないため多くの人に覚えてもらえません。
なぜなら、それがBGMに求められている要素だからです。
例えばカフェでハイクオリティのジャズが流れ続けているとします。
「素晴らしいジャズだ!」
と聞きいってしまい、コーヒー1杯で3時間滞在するとします。
リピーターは来るかもしれませんが、コーヒー1杯で3時間も滞在されたらカフェの経営としては困りものですよね。
カフェのオーナーとしては【それっぽいジャズ】を流しておいて、それっぽい空間を演出するだけで十分なのです。
話を戻しますが、AIはこの【それっぽいBGM】を作ることに長けています。
もともとこういったBGMを作っていた作曲家からすると、まさに天敵であることは間違いないでしょう。
世の中でのAI作曲の活用状況
正直、普通に生活しているだけであればAI作曲はまだ生活に馴染んできていません。
ですが、作曲家への影響はかなり出てきています。
これはYoutubeを見てみると顕著に分かります。
Youtubeで【BGM カフェ 作業用】などと検索してみてください。
恐らくオシャレな写真がサムネイルになっている数時間単位の動画が沢山出てくると思います。
その動画を投稿しているチャンネルを是非見てみてください。
連日同じような動画を大量に投稿していると思います。
通常BGMを1曲作ろうとしたら、どんなに頑張っても1日2~3曲が限界です。
ですがAIであれば数時間に及ぶ曲を連日生み出せます。
そんな曲が乱立してしまうと、もともと時間をかけて作られている曲も埋もれてしまいます。
事実、今までに数百数十万再生されたBGMクリエイターですら、ここ最近の再生数がガタ落ちしています。
ですがBGMを使う側からしたら特に問題ない、というところが世知辛いところです。
AI作曲にできること/できないこと
では作曲家はもうだめなのか…
と言われるとそんなことはありません。
先ほども例にありましたが、歌もの楽曲はまだまだ戦えます。
もちろん売れるようになるには技術やセンスはもちろん、運もかなり影響してきますが、土壌としては問題ありません。
ではBGMの作曲家はどうなのかというと、正直今まで通りの活動では難しいと思います。
ですが、現時点でAIが追い付いていない要素がいくつかあります。
というのも
- ループする曲の生成が苦手
- 使われる楽器の音が酷似する
- マニアックジャンルの曲の生成が苦手
といった弱点を抱えています。
例えばゲームで使われるBGMはループすることが基本求められますが、そういったBGMを作れるAI機能はまだ多くありません。
ループできる曲を作れると言っているAI作曲であっても、実際ループさせてみると違和感があります。
またAI作曲昨日がもつ楽器のデータベースをもとに作曲するため、いくら色が求められないとはいえあまりにも類似した曲ばかりが生成されてしまっています。
またEDMやジャズなどメジャーなジャンルはAI作曲の得意分野ですが、民族系などの雰囲気が独特なジャンルにはまだ対応できていません。
こういったニッチなジャンルのBGMはまだまだ独特な雰囲気を再現できる作曲家は強いと考えます。
まとめ
作曲家目線で考えると、AI作曲の登場によって立場が厳しくなってきているのは事実です。
ですが、AI作曲は既存の作曲家へ非常に大きなメリットをもたらしてくれることもあります。
そのメリットというのは
ことです。
AI作曲をする際は、こんなジャンルの曲を作ってとAIに命令します。
その際、「普段ロックを作っているけどラテン系の要素も加えたいな」
と思って命令すると、それっぽい曲が大体できます。
そうしてできた曲は、案外学ぶ要素が多い曲だったりします。
作曲スキルはもちろん、生き残る術を模索することがAIに負けないようにするための道です。
比較的マイナス面が多い記事になってしまいましたが、作曲家はもともと作曲(音楽)が好きで始めているはずです。
もうだめだと悲観してしまえば、そこで終わってしまうことを忘れてはいけないと思います。
案外、初心を忘れないことが作曲家がAIに負けない一番の対策になるような気がします。
では。